ウェブ小説作家の執筆モデル試論
小説は更新のたび文字数が増加する。増加が止まったことをエターという。 作家は各期毎(...t-1, t, t+1...)に小説の生産を行う。
ここでは、各期の文字数は各期毎に小説執筆に費やした時間
小説執筆時間 簡略化のため、ここでは余暇の使い方として、執筆とゲームの2通りのみが存在し、作家は効用を最大化すると仮定する。ある1期の作家の効用関数は以下の通り。
余暇の時間は所与で、ここでは4時間と仮定する。ソースは http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/gaiyou2.pdf
関数形を特定する。限界効用逓減を仮定して対数関数を採用する。ここで
ここで、時間を費やすほど得られる効用が減少することは考えにくいので(ただの苦行)、以下の仮定をおく。
すると、効用関数は次のように書き換えられる。
この効用関数は上に凸なので(たぶん)、導関数を求めて0とおけば最適な時間配分が求まる。
ついでに
経過時間は非線形なトレンド項であり、時間とともにモチベーションは右肩下がりに低下していく。形状的には-ln(t)や1/tなど。作家は表現したい内容があって執筆を開始して、執筆が進むにつれて(基本的には)書きたい内容が減っていく。また、小説が書き上げるにつれて、整合性を考慮して書ける内容が制約されていく。 リアクションはt期のブクマやポイントの増減、感想数PV数レビュー数である。
作家の執筆は以下のような流れで行われる。
□t-1期 : : 生産された文字にリアクションが発生 □t期 前期の結果を受けてパラメータが決定 最適な配分に従って文字生産 生産された文字にリアクションが発生 □t+1期 前期の結果を受けてパラメータが決定 : :
このモデルでは、
1. 時間経過による 2. 負のリアクションによる 3. 良いコンテンツの登場による 4. 余暇時間の減少
課題? これらの要因のうち、3と4は私的情報につき観察不能。よって実証に使えるのは1と2のみである。余暇時間はモデルでは一定と仮定されているが、時間配分には影響しない。しかし、時間経過に伴い生活環境が変動する累積確率が高まり、4を引き起こすことがあるかもしれない。だとすると4と1を識別できていない問題が発生するか? また、1の仮定が当てはまらない作家が居てもおかしくない。実証では合計文字数が生存に最も強く影響しているとの結果がある。35万字を超えた作家は以下の作家とは別物かもしれない(規範?)。 ついでに書くと、「長い話を書こうとするから」「構想力不足」「別の小説を書きたくなった」「逃げ出しやすい環境」といった要因がこれまでに指摘されている。「逃げ出しやすい環境」はモチベーションに含まれると解釈し、「別の小説を書きたくなった」はβの増加である。問題なのは前者2つで、時間も意欲もあるが書けないという状況である。これはモデルで想定されていない。良いか悪いか不明だが、「整合性を考慮して書ける内容が制約されていく」として、1に含まれているかもしれない。 参考 [1] ao (2016) 「なぜエタるのか考えてみたら、とても単純な2つの要因が見つかった」/hakidas [2] sterl (2017) 「常習的にエタる作者が述べるエタる理論」/n0999ee [3] 黒塔真実 (2016)「エタらない技術~小説家になろうで連載作品を完結させるために~」/n3133dj |